「ちょうどいいストレス」と俺の第二の人生 〜成長ホルモンは甘やかされるとサボるらしい〜

「ちょうどいいストレス」と俺の第二の人生

〜成長ホルモンは甘やかされるとサボるらしい〜

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1. ストレスは悪か?いや、味方かもしれない

退職して3ヶ月。
俺は“健康人間”になるために、毎朝ヨガをし、毎晩ぬるめの風呂に浸かり、昼はプロテイン入り味噌汁をすすっていた。

心拍数は落ち着き、血圧は正常。ところが——
「なんか、やる気が出ない」「昼に眠くなる」「記憶力が妙に落ちた気がする」。

まるで“脱力生活の副作用”だ。そこで再び例の健康本を開いてみた。
そこに書かれていた一文。

「適度なストレスは、成長ホルモン分泌のスイッチになる」

……なんですと?
今まで“ストレスゼロ”こそ至高だと思っていた俺の前提が揺らいだ。

どうやら、俺の成長ホルモンは“暇すぎてサボっていた”らしい。

2. ホルモンの分泌には「プレッシャー」が必要だ!

分泌を促すためには「ちょっと焦る」「ちょっと困る」「ちょっと頑張る」くらいが良いらしい。
これを俺は“良性ストレス”と呼ぶことにした。

というわけで、以下のような「わざわざ自分を追い込むメニュー」を開始した。

  • 朝6時、あえて目覚まし3つセット(1つは遠くに置く)

  • 図書館の予約は期限ギリギリに設定

  • スマホで「毎日お題エッセイ」を投稿

  • 孫に「あした紙芝居やって!」と頼まれたら断らない(内容は丸暗記)

  • 「夕飯当番」を週に1回引き受ける(調味料探しが最難関)

こうして日々、俺は「成長ホルモンよ、来い!」とプレッシャーを自ら演出するようになった。

3. 孫プレッシャーは最強のストレスマシン

「じいじ、今日も“あの歌”うたってー!」

これが一番キツい。いや、カワイイんだけどキツい。
その“あの歌”が、テンポ120BPMのダンス付きだ。しかも音程が1オクターブ上下する仕様。筋肉も脳も振り回される。

だが、これが終わると心地よい疲労感と達成感に包まれる。
「よし、きっとホルモン出たぞ」と満足げに腕を組む俺に、孫が言う。

「じいじ、明日は振付ちょっと変えるね」

……やっぱりこの子、天才かサディストのどっちかだ。

4. 料理という名の“成長ホルモン・クエスト”

料理は極めて“ちょうどいいストレス”だった。
レシピを覚え、買い物で迷い、フライパンの温度をにらみつける。なぜか玉ねぎは2回目でも泣かされる。

1時間の料理タイムは、脳・手・五感がフル稼働。
完成した料理は塩加減がバラバラでも、妻は笑ってくれる。

「ねえ、これ…中華?和食?」
「“和華(わか)”です。分泌の香りを添えて。」

この答えが出た瞬間、俺の中のホルモンもニヤリと笑ったに違いない。

5. “ちょいムズ”の世界に足を踏み入れる

成長ホルモンは「未知との出会い」に反応する。
つまり、“楽な慣れ”よりも“挑戦の不慣れ”に敏感なのだ。

というわけで、俺は以下を新たに始めた。

  • 将棋ウォーズで全国の猛者に挑む(3手で詰まされる日々)

  • ゲームで孫に勝つための秘密練習(ただしボタンが多すぎて混乱)

  • スマホで英語ニュースを読む(途中で3回辞書)

慣れない動作、慣れない言語、慣れない思考回路。
だが、この“ちょっと脳がヒリつく感覚”が、まさに“ホルモン分泌ゾーン”だと実感している。

6. 予定があるだけで分泌されるって本当か?

「人と会う約束」は、脳を“オン”にする。

俺は週に1回、喫茶店で元同僚と「定年後どうしてる選手権」を開催している。

「今日も散歩して終わりだった」と言う奴がいれば、
「孫にバク転させられた」と言う猛者もいる。

この刺激がまたいい。笑いながらも「俺も何かやらなきゃ」と背中を押される。
人と会うことは、まさに“社交型ストレス”であり、“成長ホルモン誘発装置”でもある。

7. ストレスは「ちょっと不快」がちょうどいい

俺はある日、風呂に氷を入れて“ちょい冷水浴”を試してみた。
心臓が飛び出しそうになったが、終わった後の爽快感はなかなかのもの。

実はこれ、交感神経が刺激されてホルモン分泌が促進されるのだとか。
“ちょっとキツい”が、“やりきった感”が勝る。これはいいストレスだ。

以後、俺の風呂は「40秒冷水→10分ぬる湯→爆睡」という流れに定着した。
家内には「仙人みたい」と言われるが、それは褒め言葉として受け取っておく。

8. 「今日の分泌メーター」を自作する

俺は今、“今日の分泌度”を星で自己採点している。

活動分泌度(★1~5)
孫とのダンス★★★★★
レシピ初挑戦料理★★★★☆
将棋1勝★★★★☆
早朝散歩(霜注意報つき)★★★☆☆
昼寝3時間☆☆☆☆☆

この“分泌ログ”を付けることで、「今日も成長してるな」と実感できる。
むしろ、ここまで来るとホルモンというより「自己肯定感」の話かもしれない。

だがそれでいい。自己肯定感だって、分泌されるもんだろう。

9. “悪いストレス”との付き合い方

もちろん、何でもかんでも「ストレス=善」とは限らない。

  • 過剰な義務感

  • 他人からの批判

  • 寝不足

  • 絶望的な老眼

こういったストレスは、むしろホルモンを止めてしまう。

だから俺は、“嫌なストレス”とは距離を置く代わりに、“面白いストレス”と友達になるようにしている。

「毎日ちょっとだけ困る」
「ちょっとだけ悩む」
「ちょっとだけ努力する」

この“ちょっとだけ”の積み重ねが、俺にとっては“第二の人生のスパイス”になっている。

10. 成長ホルモンがくれる“成長し続ける人生”

俺は、還暦を過ぎてから本当に「成長してる」と思うようになった。
腹筋が1つ増え、レシピが1品増え、会話の引き出しが1つ増えた。

若い頃は、“成長”なんて言葉を聞くと仕事の話ばかりだったが、
今は、自分の「人間力」がちょっとずつ育っている気がする。

そして、その背景には「ホルモン」がいる。

——俺の中で、まだちゃんと働いてくれているんだ。
——ストレスをエサにして、分泌してくれているんだ。

それがなんだか嬉しい。

エピローグ:分泌は止まらない。笑いとストレスの毎日で。

定年退職は“終わり”じゃない。むしろ「もう一度育つ時間」だ。
若さとは、数値じゃなく「前向きに困ることができる力」なんじゃないかと思う。

今日も俺は、“ちょっと困ったこと”を探しに出かける。

——レシピを見失ったまま、冷蔵庫の前でうなる
——リモコンを逆さに持ってテレビに話しかける
——スマホの通知が鳴るたびに心拍数が上がる

すべて“ちょうどいいストレス”。すべて“分泌の原材料”。

俺の体内では、きっと今日も小さなホルモン工場が働いている。
「おっ、またこの人、張り切ってるぞ」と笑いながら。

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